代官山 蔦屋書店 オフィシャルブログ
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ヴィンテージ入荷: リチャード・プリンス『Spritual America』ほか

2014年6月26日19:26

ヴィンテージ新入荷しました。以下、何冊かご紹介させて頂きます。


 ①アンドレアス・グルスキーの作品「Rehin Ⅱ」などが4億円以上の価格でアートオークション市場で落札される7年前、初めてたった「1枚の写真」で、史上初の1億円以上の落札金額をえて世界を驚嘆させたのがリチャード・プリンスでした。
2005年のことでした。





リチャード・プリンス

 その時の作品がカウボーイが疾走するマルボロのシガレット広告をアプロプリエイト、再複写ー広告のコピーした「Untitled (Cowboy), 1989」でした。カウボーイはアメリカの「シンボル」、「神話」でした。そのイメージは、表面に意味を永遠に追い続けるローンレンジャー=アーティスト=リチャード・プリンス自身といえるかもしれませんね。


「Untitled (Cowboy), 1989」が、史上初の1億円超えでオークションで取り引きされた2年後に、New York のGuggenheim Museum で30年間にわたるリチャード・プリンスの大回顧展が開催されました。展覧会タイトルは「Spiritual America」でした。



  その展覧会と同じタイトルの本作品集は、1989年にAperture(and IVAM, New York and Valencia)から刊行されたもの。収録されたすべての写真は、自身のアートを目指していた20代の頃(1970年代中頃)に、スタッフライターとしてNew YorkのTime-Life社で働いていた際、仕事の一貫で雑誌から記事の切り抜きをしていた時に、気づけば目映いばかりの高級品やそれを誘うモデルの写真ばかりが山のように切り刻まれて残された。 
そうしたイメージのなかからリチャード・プリンスに強く働きかけるイメージの断片を再撮影し編集したものです。



 「Spiritual America」というタイトルは、アメリカ近代写真の父といわれるアルフレッド・スティーグリッツの1枚の写真のタイトル「Spiritual America」にあやかったものといわれてます(以下の写真)

 いったいなぜスティーグリッツはこの1枚の写真に、「Spiritual America」というタイトルをつけたのでしょうか。興味深いところです。

 イメージを少し飛ばしてみましょう。以下の写真のようにスティーグリッツの写真「Spiritual America」は、馬車と馬に取りつけられたサドル、金具です。カウボーイのマルボロマンも同じく馬にまたがっていますね。

アルフレッド・スティーグリッツの1枚の写真のタイトル
「Spiritual America」(1923年撮影)

 スティーグリッツ自身、マルセル・デュシャンのあの美術の世界に最大の物議をもたらした作品『泉(男性用小便器の展示)』(1917年)の撮影をしていたのはよく知られたことです。作品『Spiritual America』は、デュシャンの『泉』の撮影後の6年後に制作されていることからも、スティーグリッツのタイトルづけのエッセンスは、まちがいなくレディメイド-ドキュメントからきています。その「Spiritual America」を今度は、リチャード・プリンスが再撮影-アプロプリエーションによってリプレゼントしていきました。
         

マルセル・デュシャン『泉(1917年)


 本作品集には、写真家 Garry Grossが1983年に撮った少女ブルック・シールズ(BROOKE SHIELDS 1983)の写真をアプロプリエイトした1枚も入っています。 とにかく物質文明を謳歌していたアメリカと、「Spiritual」とどこでどうつながるのか。イメージの草原をエンドレスに疾走するしかないマロボロマン。アメリカのスピリチュアルは、日々絶えず排泄されつづける広告やイメージ世界を抜けていくそのフィールドを疾駆する時に湧出してくるものでしょうか。



        「Spiritual America」には、特別インタビューが掲載されています。『クラュシュ』や『残虐行為展覧会』などで知られるイギリスのNew Wave SF作家J.G.バラードによるリチャード・プリンスへのインタビューです。

        

                      
                            J.G.バラードの小説「craush」
 
 「…アムネジア(記憶を失った)の男 が浜辺に寝ころび、錆びた自転車の車輪を眺めながら、自分とそれとの関係の中にある絶対的な本質をつかもうとする」こと。(by J.G.バラード)


 日常の中にころがっているようなオブジェへの特異な感覚が、J.G.バラードのノベルのエッセンスの一つですが、リチャード・プリンスのコレクションしたもの(印刷は2次元のオブジェ)へのオブセッション、フィジカルな反応、そこから紡ぎ出す見えない糸でつながっている絶対的本質や関係が、リチャード・プリンスへの少年時代、父との関係、家族環境へのインタビューによって明かされて行きます。

ハイウェイでクルマがクラッシュすると.....

こんなナースに看護されたり......



 

 グッゲンハイムミュージアムでのリチャード・プリンス大回顧展「Spiritual America」の最終日のグランドフィナーレ。
ルイ・ヴィトンのマーク・ジェイコブスによるナースパフォーマンスがおこなわれ会場を沸かせました!


「ナース・ペインティング」からの1枚




②『VisionareALPHABETアルファベットNo.10 
 ヴィジョネアは初期の頃が大好きだという方には、No.9Face」につづくこの 「アルファベット」がモチーフの本イシューも間違いなくその1冊。


 ニック・ナイト、スティーブン・クレイン、ルーベン・トレド、マリオ・テスティノら一線のアーティストらがアルファベット30字をそれぞれ表現しています。クレイジーな発想でほとんど読み取り不可能な図柄もありますが、どのアルファベットをクリエイティブしているのかなと頭をひねるのもまた愉快です。

 
  函上の「V」の文字は、「Vogue」誌のロゴの「Vなどヴィジョネアならではの遊 び心、センスに満ち溢れています。R」は玩具のトイザラスから、「K」はお菓子のキットカット、P」は「コスモポリタン」誌から切り取られ、表紙一面にコラージ

ュされています。


アートコンシェルジュ 加藤正樹

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